どんな献立がご希望ですの?

20年以上前、積丹店で紅鮭やキンキ、ツボダイなどを提供した事がある。
積丹町では取れない魚を。
その頃の献立に、ホッケ焼きをおすすめしていたのですが
「ホッケならいつでも食える」とお客様に言われてしょげた私。
7月のここのホッケはきみたちの知らないホッケなんだよ、とはさすがに言えなかった。
それで、キンキや紅鮭に変えた。

また、これも積丹町では取れない魚の話ですが、こんな事も鮮明に覚えている。
「サーモンとハマチの入った海鮮丼はできますか?」とのお問い合わせ。
その頃はサーモンは扱ってなかったからお断りした。
積丹町でハマチとは、いかがなものかと考えたりしていた。
仕事も終わって、魚釣りをしていた時に受けたこの電話を。

今はその頃と考えも変わって、ご要望があればちゃんとお話しを聞くようにしている。

とあるシンガーの言葉を覚えている。
「歌詞にあまり強い意味を持たせない方がいい」と、どこかのインタビューで言ってたのを。
詞が印象的な方だっただけに、当初は不思議でした。

飲食の仕事、作り手からすると、産地を気にしないお客様がいかに多い事かと思う。
極みは、回転ずしだろうか? ありとあらゆる食事を用意している。
幅広い層から愛されるには、料理人としての持論は強く前面に出さない方が良いという事も思うようになった。
今は、食べたいと言えば目玉焼き定食でもエビフライでも対応する気持ちが有る。

もう10年以上前に 「リクエスト定食」という献立を用意した事があったのです。
前もってメール予約時に食べたい食事を申し出てくれれば、大抵の食事を用意するというもの。
海鮮を主にご提供している当店で、海鮮以外の需要を感じ始めたころの事。
大人数で動くと、好き嫌いも様々なのは誰にでもある事。
さほどのご予約は無かったのですが、今でもその時の常連さんが毎年ご来店されます。
わりと大人数でご予約して下さるこの方のリクエストは、
ソーセージ、スパゲティー、厚焼き玉子の定食。
3人前ほどご用意した記憶が有る。
これが5年ほど続いていた。
そして2025年、ご予約頂いたお食事内容は、いくら丼とサーモンのセットに変わった。
あの頃、おこちゃまだった方は大人に近づいた事を感じた。

2026年、再度、リクエスト定食を始めようかとも考えている。

 

そろそろ、「はい、わかりましたよ」と簡単に言える、そんな優しい年寄り料理人になってもいい頃だと思う。

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